腸内細菌は普段の食生活、医学的理由による抗生物質摂取、生活習慣などに影響される腸内細菌と精神神経疾患の関連性研究の目覚ましい進展により、身体疾患と精神神経疾患の 関連性について、腸管粘膜における炎症、免疫反応、細菌代謝物の吸収の側面から新たな展 開が始まった。 講演論文の内容を一部抜粋してご紹介します。 <抄録より> 腸内細菌は、多種にわたり大量に腸管内に存在する。腸管粘膜は、上皮細胞間のタイトジャンクションにより緊密に結合し、表面は粘液により被覆される。 加齢や心理社会環境ストレスは粘液産生低下および免疫機能低下により腸管バリア機能が低下し たリーキーガット(leaky gut)を誘発する。その結果、精神神経系、消化器系、代謝系、免疫系の多彩な腸内細菌関連疾患を誘発する。 その主要な機序は、炎症、細菌代謝物などの侵入もしくは吸収、免疫反応である。精神神経疾患の病態においては、精神疾患は主として炎症反応が脳血液関門を障害し、神経炎症を引き起こすこと、神経変性疾患では腸管で吸収された物質が求心性神経を経由して中枢神経系で凝集することがその主要な病態と推測される。 脳腸相関に関する基本的概念 近年の腸内細菌の研究によって、腸内細菌が新たな脳腸相関のプレイヤーとして注目を集め るようになった。 腸内細菌は普段の食生活、医学的理由による抗生物質摂取、生活習慣などに影響され、心理社会的ストレスにより修飾され、その結果として、これまでとは異なる疫学的特性をもったさまざまな病態が出現することになる。 そのモデルはすでに米国の疫学的研究によって明らかになっている。従来の考え方では、代謝異常は栄養摂取状況、心理社会負荷は社会ストレス増大の影響とそれぞれ外的要因の影響と考えられてきた。 しかし、さまざまな疫学調査から代謝異常、心理社会ストレスは経済的要因によって影響される栄養摂取状況、受療行動に影響されるものであり、その結果として腸内細菌構成に何らかの影響が及び、さらにその結果として肥満やうつ病などの病態が形成されるという仮説が提唱されるに至った。 腸内細菌叢と関連が深い疾患 腸内細菌と関連する疾患 さまざまな研究から、腸内細菌の変化が確認された疾患は多種多様である(上記Fig. 1参照)。大別すると、精神神経系疾患、消化器系疾患、代謝系疾患、そして自己免疫炎症が関係する疾患である。多くは心身医学領域にも関連する病態である。 腸内細菌が病態形成にどのようにかかわるのかについては、さまざまな研究が行われている。 その骨格は、 ①多種多様な腸内細菌叢のバランスを崩す「多様性の低下」 ②「病原性を有する細菌(群)の病的増加」 ③その結果としての「腸管粘膜の炎症」とその結果としての「腸管粘膜透過性亢進」 さらにその結果として④特定の腸内細菌が腸管内で産生代謝した「代謝物の粘膜内侵入/生体への吸収」 ⑤腸内細菌の生体内への侵入による「炎症反応/免疫反応」の全身への影響 などの経路を想定することが可能となる。 その観点で、腸内細菌が関連する病態を見直すと、 ①炎症もしくは炎症性サイトカインの関連する病態として a:神経炎症がかかわる精神疾患群 b:腸管粘膜炎症を主座とする炎症性腸疾患 c:腸管粘膜微細炎症を基盤とするとみられる機能性消化管障害などの炎症を基盤とするもの ②腸内細菌代謝物あるいは生理的状態では吸収されない腸管内容物の過剰吸収によるもの ③腸管免疫機能を介した免疫反応による免疫炎症系反応を中心とするもの とに大別することができる。 中でも、精神神経系の病態においては,精神疾患系は主として神経炎症が、神経変性疾患 は主として異常代謝物の神経内蓄積が影響している可能性が推定される。 出典:教育講演 腸内細菌と精神神経疾患からみる腸脳相関(本郷道夫 MD, PhD) 2021 年、第62 回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(高松) 本論文の全文をお読みになりたい方は、こちらからPDFをダウンロードいただけます↓
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著者Natsuki アーカイブ
1月 2024
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