最新ヘルスケアニュース 2022年6月 妊娠中の化学混合物曝露が自閉症発症に関与 自閉症スペクトラム障害 (自閉症:ASD) は、 コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を伴い 30%に知的障害を合併、 11-39%にてんかんを併発する精神障害で、 「社会的コミュニケーション障害」と 「限定された興味」 を特徴とし、女児の4倍と男児に多く、 多くは生後2年以内に症状が出現する。 有病率は0.56〜1% と報告されているが、 2000年以降は米国で自閉症の有病率が増える傾向にあり、何らかの環境要因が関与している可能性が指摘されている。そんな中、イタリアのミラノ大学のジュセッペ・テスタ博士らの研究チームは妊娠中の内分泌かくらん物質の複雑な混合物への曝露が子供の脳の神経発達と言語習得に影響を及ぼす可能性に関して警鐘を鳴らしている。 研究チームは 1874名の妊婦を対象に尿と血液中の内分泌かくらん物質15種類の濃度と出生後30ヶ月の言語遅延との関連性に関して疫学調査を行った。 疫学的解析の結果、 15種類の内分泌かくらん物質のうち、ビスフェノールA、フタル酸エステル、過フッ素化合物の混合が子供の言語遅延に関連していることを発見した。 ビスフェノールA (BPA) はポリカーボネートと呼ばれるプラスチックの原料として使用が許可されているが、ポリカーボネートは主に、 電気製品、 OA機器、 自動車、 機械部品、食器、容器などに使用されている。ポリカーボネート性の食器や容器からビスフェノールAが飲食物に移行する可能性が指摘されている。 フタル酸エステルは主に塩化ビニル樹脂の可塑剤として世界各国で広く使用されている。 しかし、感受性の高い乳幼児への影響を懸念して欧州では6種類のフタル酸エステルが3歳児以下の玩具用途への使用が禁止されている。 また、 過フッ素化合物 (パーフルオロ化合物) は、 フッ素樹脂の製造や加工に用いられ、 ファストフードの包み紙、 電子レンジ調理用ポップコーンの袋などの紙製品、フライパンのフッ素コーティングに用いられている。 研究チームはこれらの内分泌かくらん物質が神経発達にどのような影響を及ぼすのかを明らかにする目的で、ヒト脳オルガノイドを用いて、 遺伝子発現に及ぼす影響を網羅的に解析した。 脳オルガノイドとはヒト胎児の神経幹細胞を試験管内で培養した組織塊で脳の遺伝子発現を 模倣することが可能な実験系で、 神経疾患の治療薬の開発研究などで有効性が確認されている。 解析の結果、 これらの内分泌かくらん物質は神経細胞の分化を妨げ、 神経組織の甲状腺ホルモン経路を障害することが分かった。 さらに、 これらの物質はアフリカツメガエルとゼブラフィッシュの実験系で同様の神経発生障害が確認された。 研究チームがこれらの内分泌かくらん物質混合物の濃度から言語遅延のリスクを予測する評価軸を再構築したところ、 今回調査に用いたコホートでは、 妊婦の54%で神経発達に影響を与えうる曝露量を超えていることが判明した。 今回の評価軸の高リスク群と低リスク群を比較すると言語遅延の発症リスクは3.3倍のリスクが推定できることが分かった。 ファストフードの普及、 プラスチック製品の普及、 電子機器の普及で生活は楽になったという利点ばかりが優先されてきた代償として健康問題に直面している可能性をテスタ博士は指摘、 警鐘を鳴らす。 昔ながらのガラス製品や陶器、 電子レンジを使わずに鍋で調理する調理法はプラスチックのゴミも出ない。 化学物質に曝露され続ける現代生活環境を見直す必要があるだろう。 出典:健康長寿コラム
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